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違法伐採対策関係ロシア極東地方視察
2007年11月15日〜11月18日




 昨夜、ロシアから無事帰国しました。前回のコラムでお伝えした通り、過酷なスケジュールで森林伐採現場・製材所などを駆け回りました。舗装も劣悪で、半分以上は未舗装の悪路(それでも国道です)を時速100キロ以上で片道400キロ以上を突っ走るのは正直少し恐ろしかったです。しかしこんな経験は二度とないだろうという視察になりました。

実を言いますと、今回の視察はロシア政府の協力を一切受けず(ビザ発給以外は)に行われました。目的が森林の不法伐採・違法伐採、そして中国資本のロシア木材産業への侵食の度合いを調査することですから、そんなことをロシア政府にオフィシャルに申し入れても許可されるはずがありません。ですからウラジオストック在住のアナトリー・レベデフさん(環境NGO BROCK代表)に終日ご同行頂き、レベデフさんの人脈・ネットワークを頼りに調査・視察は行われました。正直「拘束されたりしないんだろうなぁ・・」と一抹の不安もありました。シベリア鉄道に満載された木材

中国へとシベリア鉄道に満載されて輸出される木材
(50両編成が2台)
を撮影していたときに、遠くから二人のロシア兵がすごい勢いでこちらに走ってきたときは、「これはヤバイ!!」と一同凍りつき、必死にカメラを隠しました。政府から25年契約で6万ヘクタールの森林の伐採権を取得しているA氏や製材工場の社長や責任者などに直接話しが聞けたことは大きな収穫でした。

ペレストロイカ以降、極東では農業・畜産業が急激に衰退してしまいました。

木造建ての現地集落
そして食べていけなくなった農民が、危険を冒してでも森林から不法に木を切り出すことしか道がないという厳しく悲しい現実があります。実際、山奥に森林労務者の集落がありましたが、マイナス30度を超える極寒の地で、とても寒さを凌げそうもない、木造の簡易で小さな家ばかりでした。

伐採現場
そこに急激な経済発展が進む中国資本が、場合によって州政府や警察組織・マフィアとも一体となって保護区であっても無許可であっても、どんどん切らせていると言うのです。あらゆる場面で賄賂が日常化し、司法でさえ「カネさえあれば何とでもなる」と平然と多くのロシア人が語るのです。ある人が「官僚や弁護士・警察官、ましてや政治家になろうと考えること自体、軽蔑されるべきことだ!」と吐き捨てるように言った言葉には絶句してしまいました。彼に言わせると「警察官になるのは、社会でも最底辺の人間だ」「実際、元マフィアの親分で、拘留中の現職市長がいる」というのです。デパートの売り子さんにリベートを払えば、優先的に欲しいものが手に入るといったケースもあり、「この国で袖の下は文化であって、庶民が生き残るための知恵とも言える」とまで言い切られてしまいました。不法伐採を取り仕切るには政府の関与が欠かせません。今も一年間の搬出量・樹種・個々の伐採許可手続きなどは行われていますが、上から下まで全部グルでは余りにも問題の根が深すぎます。

不法伐採現場とは断定できないが、混入している可能性もある。

超大型トレーラーで木材が運び出される
「このままでは数百年かかって育ったロシアのそして地球にとっても大切な森林資源が、中国の資本によって近い将来丸裸にされてしまうのではないですか?」との問いかけには、「私たちもそう思います」「しかし他にどうすればいいのでしょうか?」と目に涙を浮かべて応えたA氏の顔が忘れられません。そんな中でもアナトリー・レベデフさんのように身の危険を顧みず活動される方々の姿には、すごい感動を覚えました。

日本は現在、ロシア政府の所有する旧式の原子力潜水艦の解体事業に多額の援助を行っています。そのことと同じように、日本の林業のためにも、ロシア国民のためにも、ロシアの森林資源管理の為に日本政府が協力することがあるはずです。すでにインドネシア政府とは、違法伐採をなくす為のコンピューターシステムの導入が始まっています。貧困に苦しむ地域の人々も、中国にただ丸太を輸出するのではなく、域内で加工する産業が育てば少なからず救われるはずです。

ここでロシア国民の名誉の為に言っておきますが、多くの市民は善良でお人よし、人懐っこい人々です。その人柄についてのエピソードは次の機会に書くつもりです。まだまだご報告したいことが多くありますが、今日のところはざっと4日間の旅を振り返り感想を書きました。視察内容のもっと詳しい内容については早急に整理した上でホームページ上に公開しますので、是非ご覧ください。



                        11月19日  江藤 拓





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